私立教員採用の手引き

教員採用

「学校の先生になりたい!」と思ったら、私立か公立か、という選択肢があります。以前、公立と私立の先生の採用難易度について書きましたが、ここでは「私立の先生になる方法」にフォーカスしたいと思います。

大前提 良い大学に入れ!

採用試験を受ける以前の、大前提の話になりますが、ちょっとでも私立の教員に興味がある高校生がこの記事を読んでいたら、声を大にして言いたい!良い大学(=偏差値の高い大学)に入って!!

私が以前勤めていた私立校は、偏差値が全然高くなかったですが(40後半〜)、それでも先生たちは「基本的にGMARCH以上の私立か国公立」という状態でした。体育とか音楽の先生は別ですが。

なんで学校自体の偏差値が低いのに先生には高い偏差値を求めるかというと、それが保護者・生徒の安心や、学校の宣伝につながるからです。

東大卒だから先生としての素質がある、とはもちろん言えません。でも、聞いたことのないような大学を卒業している先生よりは、信頼度が上がるのは当然です。そして、私立の学校で学費を払うのはほぼ保護者です。保護者の信用を得てなんぼの商売です。

しかも、「自分が進学したい大学より遥かに下の偏差値の大学しか卒業できなかった先生に受験指導してほしい」と思う生徒ってあまりいません。先生の指導力とか人間性の方が大事なのは百も承知ですが、指導力とか人間性を判断するのには時間がかかります。その前に、学歴で信頼を失っていたらどうしようもないということです。

「大は小を兼ねる」ならぬ「高は低を兼ねる」です。東大卒の先生なら、東大志望者も日東駒専志望者も指導できます。逆に日東駒専卒の先生が東大志望者を指導するとなると、別に出来ると思いますが、保護者や生徒から見たら「出来なさそう」と思われるだけです。

ですから、ちょっとでも私立の教員に興味があって、まだ若いんだったら、頑張って良い大学を目指してください。教員にならなかったとしても、高学歴で損することなんてないんだから、みんな勉強頑張りましょう。

ちなみに、公立の教員採用は学歴あまり関係ないと思われます。私が受けた東京都の採用試験では、履歴書に大学名を書く欄がなくてびっくりしました。

日本私学教育研究所のウェブサイト

ここからは、具体的な私立教員採用の方法です。

一番オーソドックスな方法が「日本私学教育研究所」のサイトに載っている、教職員募集情報をチェックするというものです。タダで誰でも見られるサイトですので、ググってください。

ここに何が載っているかというと、各私立の学校の求人情報です。私立の教員は欠員補充なので、いつも同じ学校・科目が掲載されているというわけではありません。

ここのサイトの募集情報のPDFを開くと、募集している学校のホームページか求人票に飛べるようになっているので、興味があるところを自分で選びます。求人票そのもののリンクが貼られていることの方が少ないので、学校のホームページに飛んだ場合は、そこから「採用情報」を探してください。大体、下の方に小さく書いてあります。

待遇とか勤務開始時期は全部学校によって異なるので、いちいちリンク先で見る必要があります。専任か非常勤か、だけでなくて「特別専任」やら「常勤講師」やら、その学校オリジナルでよく分からない職位を作っていたりするので、条件はよく確認しましょう。

勤務開始時期は大体毎年四月ですが、急な欠員のせいで「出来るだけ早く勤務開始」という求人もたまに出ています。この手のやつは、「とりあえず今年度を埋める人材を探している」というだけで、終身雇用ではない可能性が高いです。

逆に、来年の四月勤務開始の求人が、前年の五月に掲載されるなんてこともあります。つまり、11ヶ月前から求人しているということですね。

いつ求人が載るかは、完全に各学校の都合によるんですが、私の体感だと以下のような感じです。

5月〜7月 上位校が余裕を持って人材探しを始める(この段階で採用しても、後で辞退される危険性が低いから)

8月〜9月 準上位校が募集開始

9〜10月 準上位〜普通レベルの学校の募集ピーク(公立の採用試験不合格組ねらいの学校も多い)

11月〜12月 普通レベルの学校のラスト募集、(悪い意味で)ヤバい学校の募集が増える

1〜3月 この時期の専任募集は(悪い意味で)ヤバい

12月過ぎると一気に厳しくなる(良い条件の学校が減る)のと、好条件の学校は夏までに採用開始しているのが印象的でした。例外も多いので、あくまで私の印象です。

教員採用のエージェント

自分で日本私学教育研究所のウェブサイトを見るのと同時並行で、エージェントを使うのもアリです。使わなくても別に良いですが、タダだし登録しておくと良いんじゃないのでしょうか。

専任の採用を目指す人向けで一番オーソドックスなのが「教員採用.jp」というサイトです。登録しておくと、自分の条件に合った求人を紹介してくれます。あと、このエージェントを通して就活すると、事前に待遇とか教員採用試験の内容が聞けるのは助かりました。私立の教員の給与って大体非公開だし、採用試験の内容は学校によってバラバラなんですよね。

夏に大規模なキャリアフォーラムもやっています。私も行ったことがありますが、出展していたのは準上位の学校少々、大半が中レベル、ヤバい学校チラホラ、珍しい案件もチラホラ、といった感じです。

「教員採用.jp」で募集している学校が結構幅広く、日本私学教育研究所のサイトにはないものも扱っているので、登録しておいてよかったなと思いました。

「E-Staff」と「アイティーチャー」も登録していましたが、両方非常勤講師の求人が大半です。私の場合、年度途中から数ヶ月だけ非常勤で働きたい、という事情が生じたことがあって、その時には便利でした。専任で働きたい場合は、この二社の利用だけだと無理があると思います。

ちなみに、「教員採用.jp」は学校名を公開している求人がほとんどですが、「E-Staff」や「アイティーチャー」は結構伏せられています。聞けば教えてもらえます。あと、「⚪︎⚪︎駅から徒歩5分!伝統のある人気の男子校!」みたいな求人票なので、ちょっと検索すればどこのことを言っているかは分かると思います。

私学適性検査

私学適性検査について調べてみたら、何と東京都は今年で廃止みたいですね…!「東京私学教職員エントリーシステム」というものに変わるみたいですが、詳細は不明です。私学適性は静岡県、愛知県、兵庫県、広島県でもやっています。私が受けた東京都の私学適性が、新しいシステムや他の都道府県と同様かはちょっと分からないですが、概ね似たようなもんだと思うので書いておきます。

試験日は八月末で、試験科目は専門科目と教職教養です。点数に応じてA〜Dで評価されて、名簿に記載されます。その名簿を見て、求人したい私立の学校が連絡してくる、というシステムです。つまり、合格・不合格はなく、成績が良いほど良い求人が来る可能性が高い、ということになります。

専門科目は国語の教師だったら国語、数学だったら数学、ということです。教職教養は、公立の採用試験の教職教養と似たような感じだったと思います。過去問が販売されているので、確認して見てください。専門科目は公立よりは難しかった記憶があります。

私は私学適性にかける意欲が皆無だったため、ノー勉で挑みました。結果、専門科目B、教職教養Cという結果に終わりました。笑

「教職教養は公立の採用試験と似ている」と言ったそばから、なんで公立の教員採用を受けて(しかも受かって)いるのに、私学適性だとそんなにスコアが落ちるんですか?って話ですよね。本当に興味がない内容だったんで、公立の教員採用試験が終わった瞬間全部忘れたんですよ…。

ちなみに、このスコアでもちょっと求人は来ました。スカウトというわけではなく、「ウチで採用試験をしているから受けませんか?」というお知らせです。成績B・Cの受験生のところに来る求人って、結構ヤバい学校だと思います。しかも、採用確約じゃなくてただの求人のお知らせなので、コスパ悪いなと思いました。(私学適性を受けるのに試験代がかかります)

成績A・Aならもっと役に立ったのかもしれませんが、あまり有意義な就活方法だとは思いませんでしたね。

履歴書預かり制度

各都道府県がやっている制度です。履歴書を預けておくと、求人したい私立の学校がそれを見て連絡してくるという仕組みになります。都道府県によってシステムが多少異なるみたいですが、基本的に「いきなり採用!」というわけではないです。

私はこの制度は使いませんでした。というのも、特に東京は私立の学校が多くて、求人情報もかなり色々手に入ったので、これ以上やらなくていいかなと思ったからです。しかも、エージェント経由でも、私学適性の名簿経由でも、公開されている求人と被っているのも多かったので、もういいやとなりました。私の周りを見ても、この制度で教員として就職している人はあまりいないですね。まあ、「良い求人が来たらラッキー!」ぐらいのつもりで預けておくのはいいかもしれません。

大学の求人票

意外と見落としがちな「大学の教職コーナーが公開している求人票」ですが、これはお宝が眠っている可能性が高いです。特に、自分の通っている大学が偏差値高めなら、かなり良い求人が学生向けに公開されているかもしれません。しかも、良い大学にそこまでヤバい求人は来ないので、ある程度の信頼性もあります。

私の場合、自分の大学の求人票で公開されているもので、一般非公開のものがいくつかありました。しかもスーパー好条件。すごく見つけにくいところで、すごく良い案件が紹介されていてびっくりしました。

大学の在校生だけでなく、卒業生でも応募できる可能性が結構高いです。卒業済みでも、自分の出身大学の教職コーナーの求人を見たり、就職相談するのはアリだと思います。

色々紹介しましたが、基本は「私学教育研究所」で公開求人を探しつつ他の方法も併用する、だと思います。

私の場合は、「私学〜」の公開求人への応募が95%、教員採用.jpのキャリアフォーラムに参加するが応募せず、私学適性検査経由の求人は応募せず、大学の教職の求人コーナーは見ていたけれど応募せず、という感じでした。

特に東京はやたらに私立の非常勤講師の求人が多くて、専任の求人が埋もれがちなんですが、個人的にはまずは専任を目指して情報収集するのをお勧めします。

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