私は日本で大学院の修士課程も修了しているんですが、院は学部と違うところに通っていました。学部と院が同じ大学の場合、大学によっては内部推薦制度で院試をスキップできることもあるんですが、違う大学院に行くなら院試は必須です。
院試の情報は、大学入試ほど情報も出回っていないので、私の経験が参考になれば…ということでシェア。
ちなみに私の場合は、学部新卒ストレートで教育系を二校受験して二校とも合格、先に合格通知をもらったほうに進学しました。
学部からストレートで他大学の院に進む人はいますけれど、少数派です。社会人を経て、大学院に進学する人は、学部のときとは違う大学を選んでいることが結構多いような気がします。どっちの場合でも、ちゃんと準備すれば受かるはずです。
院試のスケジュール
いつ院試があるかはもちろん大学によりますが、だいたいが秋〜冬。2回院試を実施してくれる大学院もありますが、人気の大学やコースだと無さそうです。
就活がほぼ終わっている時期なので、「就活がダメだったら院進学」も可能といえば可能。ただし、院試も準備が必要なので、スケジュールは考慮した方が良さそう。
私が受験した時は、
学部4年の6月ぐらい 他大の院に進学することを決める
学部4年の夏 院試の準備を始める、大学院主催の説明会に行く
学部4年の9〜10月 院試(二校)
学部4年の11月 合格発表
といった感じでした。二校とも落ちていたら、他の大学院の2回目の院試を受けていたかもしれません。が、当時は何も考えていませんでした。私の受験した大学院は、両方とも1回しか院試を実施していなかったです。
どうやって選ぶ?
学部と同じ大学で院進学するなら選ぶ苦労もないですが、別の大学で進学したいならリサーチして選ぶ必要があります。選び方はいろいろです。
①自分の研究したい分野で著名な教授がいる大学院
ポピュラーな方法です。「自分の入学その教授が入れ替わりで退職してしまった/サバティカル(研究休暇)を年単位で取得してしまった」という話をたまに聞くので、確認が大事。
大体の大学院は説明会を開催するので、その時にその教授の研究室の生徒に聞いてみると良いです。
②自分の研究したい分野の学部の偏差値が高い
大学院は偏差値で比較しようもないですが、学部の偏差値は大体大学院のレベルに反映されていると思います。
例えば、文学部の院に進学したいなら、学部の文学部の偏差値ランキングをそのまま志望順にしてしまうという方法。そんなにハズレはないはずです。
③修了生の修論のテーマ
修了生の修論のテーマは、その学校のHPで紹介されていることが多いです。それを見ると、大体の傾向がわかるので、自分の興味のありそうな分野を選ぶのもあり。
HPで紹介されていない場合は、大学院の説明会で院生を捕まえて聞いてみましょう。
ちなみに、私の周りで院と学部で大学が違う人たちは、「自分が元々在籍していた大学では、やりたい分野の研究が盛んではない」「憧れの教授がいる」「学歴ロンダ(学部より有名な大学に行きたい)」「知人がその研究室にいた」などです。私もこの中の一つの理由で学部から別の大学に移りました。
院試の準備
一番大事な準備は、研究計画書(志望動機)です。筆記試験があるところはその準備も必要です。
◆研究計画書(志望動機)
「大学院で何を研究したいのか」ということを書くものです。なぜそれを大学院で勉強したいのか、ということも触れるので、志望動機的な要素も混ざってきます。
研究したいことを好きに書きまくれば良いというわけではありません。リサーチが必要です。
リサーチすること① 研究したい分野の先行研究
まず、大学院で研究したい分野についての先行研究(すでに他の人に調べられていること)を調べます。
どうして先行研究を調べないといけないかというと、すでに答えが出ていることはこれ以上研究のしようがないからです。あるいは、調査不可能という結論が出ている分野もあります。それを研究計画書に書くのは宜しくないですね。
先行研究を調べておくと、その分野の今のトレンドも分かります。古い年代の先行研究しか出てこないということは、今流行っていないということだし、今流行らないということには何かしらの理由があるはずです。もう研究し尽くされていて研究の余地がないとか、決定的な欠陥があったとか、時代にあっていないとか。
そして、先行研究を調べていくと、「もうすべて研究され尽くされてるやん…」という気持ちになるはず。そう、大概のことは誰かが既に調べているんです。修士課程の院生ごときに新しい発見ができるはずがない!特に文系!私もめっちゃ絶望した!!
じゃあ何を研究計画対象にするのかというと、「既存の研究を特定のジャンルに適用する調査」か「既存の研究同士を掛け合わせた調査」を計画すればいいわけです。
例えば、「SNSの使いすぎが子どもに与える悪い影響」という研究なら腐るほどあるはずです。これだと研究計画に落とし込みようもないので、「悪い影響」をもっと細分化します。例えば「SNSの使いすぎによる子どもの自己肯定感の低下」とか。「子ども」ももっとジャンルを絞りましょう。「女子高校生」とか「シングルペアレントを持つ子ども」とか「公立中学校に通う子ども」とか。
じゃあ仮に「SNSの使いすぎによる女子高生の自己肯定感の低下」という研究テーマにしたとして、ドンピシャの先行研究はないはずなので(もしあったら、そのテーマは変えましょう。研究の余地無しです。)、「SNSの使用量の推移」とか「現代の子どもの自己肯定感」とか「自己肯定感が低下する環境」とか、ちょっとずつテーマと被る先行研究を探していきます。で、自分の研究に関係のありそうなところをパッチワークしていきます。
本来の研究はパッチワークではダメなんですが、研究計画書の段階でそこまで厳しくは見られないことがほとんどです。あと、パッチワーク戦法の利点は「私はこれだけのことを既に調べていますよ!意欲ありますよ!」ということをアピールしやすいことです。
研究計画書の時点で洗練されたものを期待している教授って、あまりいないと思います。「この人なら大学院に入ってもしっかりやっていけそうだな」ということを示すためにも、「先行研究しましたよアピール」は大事。
リサーチすること②入りたい研究室の教授の論文
基本的に、日本の大学院は研究室に配属されるシステムのはずなので、入りたい研究室の教授がどんなことを研究しているのか調べておきましょう。
完全に同じテーマである必要はないですが、全くかすりもしていない研究計画書を書くのはやめた方がいいと思います。研究室の教授も「この学生を採っても指導できないよなあ〜」と敬遠する可能性大です。
あと、もっと最悪なのが知らずにうっかりその教授の主張と逆のことを主張する計画書。事前調査していないのがバレバレです。
「(研究室の)山田教授はSNSの教育的価値を主張しているが、私は悪影響の方が勝ると思う。このことを研究室で議論したい。」みたいな感じで、自覚的に書くならいいかもしれません。
◆過去問を解く
筆記無しの院試もあるようですが、筆記試験がある場合は絶対過去問を確保しましょう。
というのも、院試って大学院の教授が作っているので、教授のカラー全開なことが多いんですよね。つまり、一般常識では全然解けない。特に文系。
院試を解いて、そこで問われていることの周辺情報を自分で調べてみる、というのが良いと思います。例えば、ある特定の哲学者のことが毎年出題されているならその人についての本を読む、ということです。
私が受けた大学院は、英語の試験もあったので英語の勉強もしました。が、合格後に「英語のスコアはほぼ気にしていない」と教授に言われました。笑
まあそのあたりも大学によりますので、出題されるならちゃんと準備しておきましょう。
まとめ
文系の院試は、知識勝負ではないことが大半です。研究計画書が軸になってくるので、ここにはしっかり時間をかけてください。研究計画書は一夜漬けでは作れないので、早めに取りかかりましょう。Chat GPTとか、レポート書いてくれる系の有料サービスにぶん投げるのはマジでやめたほうが良いです。浅すぎてバレます。
研究計画書を書きやすくするためにも、自分の興味にあった大学院選びは超重要です。いくら有名な大学でも、大学院で扱っている専門領域が自分の興味と全然あっていないと、研究計画書を書くのが超絶辛くなります。ネームバリューはもちろん大事ですけれど、本当に興味がある分野かはよく見極めて下さい。
クラシックな学問(哲学とか歴史学とか文学とか)だと話は別ですが、教育学、特に実践系の教育学で、レベル高すぎて院試が手に負えない…みたいな話はあまり聞いたことがないです。ちゃんと準備すれば他大からでも入れるので、面白そうだと思ったチャレンジしてみる選択肢も残しておくことをお勧めします!
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